もう数十年も前のお話
永く勤めていたスーパーが閉店になると聞いた時 最後の瞬間に立ち会いたいと思った。
蛍の光の音楽とともに シャッターが降りていくシーンを共有したい と思った。
その日 夕方近く 店の周辺で閉店の時をまった。
その時刻が来た。
店員が入り口のガラス戸を締める。 と 一斉に商品や棚を動かし 片付けはじめた。
店員だけでなく 取引先の社員らしい人たちも 入り混じって 店の中は騒然とした空間になっていった。
私は感傷の涙を出しそこねて 外の暗がりに つっ立っているばかりだった。