十数年前
夫の入院で 病院と自宅を忙しく往復していた時期のこと
息子や娘の家族が 遠方から入れ替わり立ち替わり 見舞いに来る
そんな時期 十日程 娘と来ていた幼い孫娘が
「 おばあちゃん おばあちゃんはどうして おなじ服ばかり着てるの 」
と言った
私は 茶色のセーターと
オレンジのヴェスト
黒いズボン
一ヶ月くらい同じ服装だった
七分袖のセーターは仕事がし易い
腰まで包んだヴェストは仕事がし易い
裾のつまったズボンは仕事がし易い
夫の看病 着替えの洗濯 見舞客の応対 家族の三度の食事
あれや これや雑用の山積した時期に合う服は
これ以外持ち合わせがなかったのだ
「 おばあちゃんは 毎日 下着は取り換えているのよ 」
と言うのがやっとだった
孫は自分が毎日着替えさせられているのに
おばあさんが 着たきり雀なのが 不思議にみえたのだろう
子供の目の妥協のない正確さ
ありのままに見える子供の目
私は自分の怠惰さを都合よくごまかしている時
「 おばあちゃんは どうしておなじ服ばかり 着てるの 」
と言った孫の言葉をおもいだすのだ