戦前 私の家は 菓子屋を生業にしていた
菓子と言っても 煎餅 落雁 焼き菓子 飴などの
駄菓子の製造と販売で
家の中は いつも あまい匂いがただよっていた
家内作業だから 家族全員が働き手だ
4歳の頃の 記憶がある
私は 曾祖母が煎餅を焼くそばに座り
ひいばあさんが煎餅を型から ホイと放り出すのを
ヒョイと受けて 煎餅がやわらかいうちに
木型に押し当て 半月形に曲げるのだった
4歳の子供が 素手で食べ物の素材を扱うなど
いまでは考えられないが
砂糖を熱く溶いた液をまぶす
" 醂(りん)掛け ”
の工程が 次にあるので
子供の小汚い手でも ゆるされたのだろう
ひいばあさんに
「 △❏子 は ヨカ 加勢になる 」
と ほめられるのが うれしかった
年寄りや子供でも それぞれに役割があったのは
しあわせな事と 今になって思う