一回り年下の友人が亡くなられた
入院して三か月も 経たずのことだった
一緒にお茶を飲んで別れた者たちには
信じられない出来事だった
病院嫌いで 検診を受けるのも敬遠していたと
後で聞いた
夜 北側の網戸に 羽音もたてず蝉がとまっていた
それは 理由もなく彼女をおもわせた
朝 網戸に蝉は無く 南側のベランダに毛布を抱えて出ると
目の高さに 昨夜の蝉と思われるのが
羽の模様を浮きあがらせるようにとまっていた
彼女が別れをつげにきたのだ と私は思い込むことにした
次にベランダに出た時 蝉の姿はなかった