小路(こみち)のブログ

趣味の絵やその他日々感じたことを綴っています

ほたる

戦後の食糧難の一時期 

 父や叔父達は 里山の荒地を借り受け開墾して 

 じゃがいもや さつま芋を植えた

夕方 家族での畑仕事を終えて ささやかな収穫を 

 手製の箱車に乗せて 坂道を下って来ると 

 山裾は夕闇につつまれて  湿地の草むらに ほたるが点滅するのが見えた 

 

水路の水音をたよりに 畦道をゆくと 水の落ちる溜まりの一隅に

 笹竹や すすきの一叢があり 蛍が無数 光の尾を引いて飛びかっていた 

 袋に捕まえ 持ち帰った 

 

ガラスの壜に草を添えていれ その 黄や薄緑の光の点滅に見入った 

 翌朝 壜の中に赤と黒の虫が独特の臭いを放ちながら 

 草の間に動かないでいるのを見つけ 

 あの光が見られないことに落胆した 

 ほたるの命の営みにまで 思いをはせるには 

 稚なすぎた 遠い日のこと

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