かるた
昭和24~5年頃は 映画かラジオぐらいが娯楽の中心だった
近所に ”百人一首” が飯より好き という変わった小父さんがいて
正月はもとより 季節に関係なく
”かるた取り” のすきな十数人が
暇さえあればその人の家に集まって 技を磨いていた
年齢も様々。
姉と私もその中にいた 姉は中学生 私は小学高学年の頃。
姉は記憶力がよく トランプの”神経衰弱”が強かった
取り札を並べる時 姉は 上の句の始まりの字 ”あ”は ”あ”のグループ
”お” は ”お”のグループに 素早く置いていった
取り札を すべてグループごとに並べていた
”乙女の姿しばしとどめむ” は ”天津風”で ”あ” のグループ
”まだふみも見ず天橋立” は ”大江山”で ”お” のグループだった
姉と対戦すると 取り始めは互角だが
場に取り札が減ってくると 姉の独壇場だった
私は 毎回大差で負け 悔しくて地団駄を踏むばかりだった
あの頃は 大人にも子供にも
百人一首 に魅入られた強者が沢山いた
百人一首は 和歌の音韻 古いことばの言いまわしなどが
遊びの中で自然と身につき
古典へなじむ きっかけにもなる 優れたツールであると思う