昔の暮らしには 燃える火が身近にあった
午後も四時をまわると 十歳前後の私でも
七輪に火を起こすのが 役目のようになっていた
ガスも使ってはいたが 飯はかまどで
おかずは 七輪で煮炊きしていた
炊事場はセメントを張った土間になっていたので
かまどの火が飛び散っても平気だった
火消し壺 火掻き棒 火吹き竹 火箸
今では絵で説明しなければ分からない道具が活躍した
子供が火を扱っても それは日々の家事の一部であったから
何の問題もなかった
ゴミを燃やすことも 当たり前にやっていた
火を燃やすのは 好きだった
絶え間なく変る炎の動き
火の色の変化や 揺らめき 匂い 熱
その場所にいるのは 心地よかった
明日は 各地で鬼すべ神事が行われるだろう
いろいろ呼び名があるが 火祭りの行事だ
清浄な火で悪鬼を祓う祭り
火は 人を ちょっと異次元の世界に導くようだ