家風
嫂が我が家の一員になった時
私は二十を少し過ぎていた
何年かたって嫂が家族にも馴染んだころ
洩らすように言ったこと とは
嫂は嫁に来たばかりの頃
毎日の食事時は 息が詰まる思いをしたそうだ
二つのちゃぶ台を囲んだ家族は
舅 姑 小姑 あわせて七~八人はいたと思う
それが全員 無言で黙々と箸を動かしいる様が
なんとも異様で 信じられない光景だったという
嫂は 思いっきりお喋りをしながら
食事する習慣の家から来た人だったのだ
私は私で ” 嫂が驚いた ” ということに驚いていた
お喋りしながら食事する家があるという事に だ。
物心ついた頃から 食事は黙ってするのが
太陽が東から昇るように自然のことと 思っていたから。
程なく兄夫婦は目と鼻の先の家に別居したので
嫂の苦痛は解消されたはずだ
大は国家.民族 小は夫婦.嫁姑の間に至るまで
” 文化の衝突 ”はあると感じた事の一つ。