バスが なかなか発車しないので気づいた
若い女性が靴先で 座席に蹴りを入れている
さっきからする音は彼女のランニングシュウズの音だった
運転士が側に行って やめて座席に座るように説得する
彼女の顔は無表情で 視点がさだまらず
運転士の言葉も聞こえぬかのように
通路に座って ゆっくり靴の紐を結び直す
運転士が「 事業所に連絡して係員を呼んでよろしいでしょうか 」
と 丁寧に三度言った
彼女が座席に座ったのは 理解する能力はあったのだ
運転士の仕事も大変だ 千差万別の人間の要求を受け止め
乗客の安全を確保し かつ平常心を保っていなければならない
仕事が終わったら 何かで発散させて下さいね