小路(こみち)のブログ

趣味の絵やその他日々感じたことを綴っています

納戸

古い家屋の 納戸 とか 物置 というものは

 子供にとって 異質な空間だった

 

 納戸は はじめから  

 その位置が 図面に決められていた訳ではなく

 建物の どうにも使い道のない部分が 

 納戸になった形跡がある

 

納戸の戸 一枚あけると 

 そこには不思議な空気が ただよっていた

 明り取りの 天窓から差し込む光線の下に 

 むき出しの梁が交差し

 壁の赤土の塗り残しの間からは 

 木舞竹が屋根板へむかって 並んでいるのが見え

 その奥には 暗い闇が ひろがっていた

 

それ以上に 恐怖を生じさせたのが 

 古ぼけた箱の並ぶ棚の上段に

 頭が大人の二倍もある ”福助”の土人形が居座っていたことである

 

かって 縁起物として使われたのか 

 由来もわからぬ この土人形

 塗りのはげた姿で 焦点の定まらぬ 黒い目をみひらいて

 部屋を支配しているかのようであった 

 

駄々をこねている子供に

「 分からんことばっかり言うと 福助さんが 来るよ 」

 といえば 一言でおとなしくなる効用が

 この土人形が置いてあった理由かもしれない

 

子供が何人か集まれば 

 数の勢いで 戸を押し開いては 

 皆んな恐怖にかられて

 梯子段をかけ下りた 

 

母と一緒に 長持の中の雛道具を取り出す時も 

 背後に人形の視線を感じて

 落ち着かなかった 

 その時 私の血圧はピンとはね上がっていたはずである

 私の血圧が高いのは この時以来のようだ

 

今の建物は どこもかしこも明るく 暗闇がない

 未知のものへの 恐怖より 

 人間そのものが 恐ろしい 昨今である

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