パネルに バックの色を塗っている私に
「そこで 刷毛を置いてください」
と先生が言われる
絵皿には あと ひと刷毛分の絵の具が残っている
私は もったいないので 全部塗ってしまいたいのだ。
「もったいない は やめて下さい」
と先生は言われる
残りを全部塗ったら ブチコワシになるそうだ
又 私が そこで使う ギリギリの分量の絵の具を溶かしていると
「絵の具をケチっていると 良い絵は描けません
けちの精神を改めましょう」
と言われる
日本画の絵の具は 岩絵具を使うのだが
天然の岩を砕いて作った岩絵具は勿論
新岩絵具とよばれる人工の岩絵具でも
茶さじ一杯くらいで3~400円する
天然の朱や 紫など
初心者にはもったいなくて 使えないのだ
合理的精神に鍛えられてきた私は
筆先に残る一滴まで 使いたいと思う
皿に残った絵の具を どうして洗い流せよう
そんな次第で 使い残しの絵皿が 次々と増えていくのだ
干からびていく絵の具をみて 思う
これは 縫い針に残った10センチくらいの糸みたいなものだ。
全部を使い切ることは出来ないし
この部分なくしては縫うことも出来ない必要経費なのだ
残った絵の具は どこかで 生かせるよう心がけよう