バスの中で
車窓から
農家の庭先の 葉がおちた枝に
柿の実が鈴なりになっているのが みえる。
人手がないのか 実をほしがる人も いないのか。
はたまた 渋柿なのか。
老夫婦が 乗って来た。
「 父ちゃん そこが空いとるよ 」
” 父ちゃん ”は 妻にすべてをゆだねたように
安心して 座席にすわる。
この ” 父ちゃん” は幸せだなあ と 密かにおもう。
こんなに 身の回りを世話してくれる
” 母ちゃん ” がいるのだもの。
バスが 赤に変わりかけた 横断歩道を 右折しかかると
その前を 必死に通り抜けようとする
自転車がいる。
バカだなあ 1秒か2秒速く進んで 時間を得したつもりかしら。
と 口のなかで言う。
そう言う私は 当たると評判の 宝くじ売り場まで
バスに乗って 買いに行くところだ。
気がつくとさっきの老夫婦は いつの間にか降りていた。